【雨の日のギター】走れない週末の救世主、デレク・トラックス・バンドのファーストを聴き直す

こんにちは。内線#39です。
梅雨ですね。バイク乗りにとって、雨は天敵です。走りに行けない週末ほど切ないものはありません。窓の外を見ては「今日もダメか…」とため息をつき、結局やることといえば、ギターを抱えてソファに沈み込むこと。
実はここ最近、いろんな人に「これ弾いてみなよ」「次はこのジャンルだろ」とそそのかされ、節操なく多ジャンルに手を出しております。ロックで覚醒し、速弾きに人生をひっくり返され、気づけばギターもベースもドラムも“中途半端に”弾ける残念な父になった私ですが、雨が続くとつい新しいものに浮気したくなるんですね。
で、あれこれ漁っているうちに、ふと本棚の奥から引っ張り出してきた一枚のCD。
The Derek Trucks Band/デレク・トラックス・バンドのファースト・アルバム。
久しぶりに通して聴いて、正直、鳥肌が立ちました。今日はこれを紹介させてください。
そもそもデレク・トラックスって誰?
スライドギターの名手、と言えば伝わる人には一瞬で伝わると思います。あのオールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー、故ブッチ・トラックスの甥っ子で、9歳でギターを握り、十代前半でステージに立っていたという、いわゆる本物の天才です。後にオールマン・ブラザーズの正式メンバーにもなり、奥さんのスーザン・テデスキとテデスキ・トラックス・バンドを率いる、現代を代表するギタリストのひとりですね。
ローリング・ストーン誌の「歴史上最も偉大なギタリスト100人」にも選ばれている人です。肩書きを並べるとキリがないので、このへんにしておきます。
衝撃なのは、このアルバムを「17歳」で出していること
このファースト・アルバム、リリースが1997年。録音はその前年の1996年で、なんと当時デレクは16歳。アルバムが世に出たときでようやく17歳です。
高校生ですよ。私が高校生の頃なんて、コードを3つ覚えてイキっていただけでした。いやいや、1度と5度、いわゆるパワーコードゴリゴリで、3度?メジャー、マイナー、そんなもんはプレイヤーの表情でどうだってなる!! なんて、若気の至りの極みでしたね。
しかも内容がとんでもない。収録曲を見て、思わず二度見しました。
ジョン・コルトレーンの「Mr. P.C.」と「Naima(ナイマ)」、マイルス・デイヴィスの「So What」、ウェイン・ショーターの「Footprints」——つまり、ジャズの大名曲をズラリと並べて、それをスライドギターで弾き倒しているんです。
普通やりますか、これ。トランペットやサックスで紡がれた旋律を、十代の少年がボトルネックで再構築する。蛮勇というか、ある種のチャレンジ精神というか。でも、聴けばわかります。蛮勇では終わっていない。ちゃんと“成立”しているどころか、めちゃくちゃ良いんです。
何がそんなに良いのか
一曲目「Sarod」のわずか35秒のイントロから、ただならぬ空気が流れます。サロード(インドの弦楽器)の響きで幕を開けるあたり、すでに「ただのブルース小僧じゃないぞ」という宣言のようです。
そして白眉はやはりジャズ曲群。マイルスの「So What」のあのクールなテーマを、スライド特有の“歌うような”ニュアンスでなぞっていくと、原曲とはまた違った濃密な何かが立ち上がってきます。コルトレーンの「Naima」の、あの美しくも切ないメロディなんて、スライドギターと相性が良すぎて反則です。
バンドの演奏も素晴らしい。オルガンやウーリッツァーが空間を埋め、ドラムとベースがどっしり支える。決してギター一人の自己満足アルバムではなく、四人がきっちり噛み合った“バンド”の音になっているのが大きい。米国の有名音楽ガイド誌では「a flawless recording(一分の隙もない録音)」とまで評されていました。
雨の日にこそ、こういう一枚を
新しいジャンルに手を出すのも楽しいんです。でも、こうして昔よく聴いた一枚を、何年も経ってから聴き直すと、自分の耳が少し変わっていることに気づきます。当時はギターの音ばかり追っていたのに、今はバンド全体の呼吸や、曲の組み立て方に耳がいく。同じアルバムなのに、新しい発見がある。これも音楽の醍醐味ですよね。
バイクに乗れない雨の週末。外がダメなら、内に潜るしかありません。コーヒーでも淹れて、このアルバムを通しで聴いて、できれば真似して一フレーズでも弾いてみる。……まあ、十代のデレクの足元にも及ばないわけですが、それはそれで楽しいものです。
そそのかしてくれた皆さん、ありがとう。おかげで遠回りして、また名盤に戻ってこられました。
雨、早く上がらないかな。
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